発行日 2012年7月1日
Published Date 2012/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2012359096
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
69歳男性。膝くずれによる歩行困難、右大腿前面の疼痛としびれを主訴に、他院にて腰部脊柱管狭窄症と診断され、L2-L4の除圧術が行われるも症状は改善せず、術後半年で著者らの施設へ紹介となった。所見では単純X線で右股関節に進行期の関節症性変化が認められ、CT冠状断像では右臼蓋前壁の一部に骨破壊像がみられ、同部位に接して骨盤先方に突出する嚢胞性病変が確認された。一方、MRIではT1強調画像で内部が低信号、周囲が等信号、T2強調画像で内部が不均一な低信号、周囲が高信号であった。また、ガドリニウム造影では周囲組織のみが造影される病変が大腿神経直下に存在していた。以上より、本症例は変形性股関節症に伴って発生した滑膜嚢腫による大腿神経麻痺と最終診断され、嚢腫摘出術が行われた結果、病理組織学的に滑膜嚢腫で、術後、大腿筋力は回復し、右下肢の疼痛およびしびれも消失した。しかし歩行時において右股関節痛が増強したため、1ヵ月後に右人工股関節全置換術が行われ、目下 1年経過で嚢腫の再発や歩行時痛は認めず、長距離歩行も可能である。
©Nankodo Co., Ltd., 2012