発行日 2011年3月1日
Published Date 2011/3/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2011143737
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60歳男。右変形性股関節症にて時折NSAIDsを使用していた。今回、右大腿から膝近位前面にかけての疼痛・痺れによる歩行障害が出現し、NSAIDs使用で効果なく入院となった。単純X線で右股関節に変形性関節症変化があり、腰椎MRIでは右L1/L2レベルで右優位の椎間板膨隆を認め、L2/L3レベルでも椎間板の軽度膨隆を認めたが、椎間孔内外も含め明らかな神経根障害を疑う所見はなかった。股関節を含む骨盤MRIでは、右股関節内に滑膜の増殖と関節液の貯留を認めた。超音波ガイド下に右股関節を穿刺したところ、関節液の吸引で一時症状は改善し、吸引せず局所麻酔薬注入のみでは症状の改善はなく、貯留した関節液により拡大した右股関節包が、その浅層にある大腿神経を圧排して症状を呈していると推測した。診断確定を目的に右股関節高位で大腿神経ブロックを行ったところ、症状消失して歩行可能となり、股関節水症に起因した大腿神経障害と診断した。しかし、大腿神経ブロックの効果は持続せず、股関節高位に感覚障害部位へ放散するTinel徴候が出現したため大腿神経剥離術を行った。術直後より症状は消失し、術後3週で退院となり、術後1年のMRIで関節液貯留の再発を認めたが、疼痛・しびれの再燃はない。
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