発行日 2011年7月1日
Published Date 2011/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2011306548
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69歳女。左手指の痺れと疼痛、左前腕遠位掌尺側の腫瘤を主訴とした。X線の正面像で遠位橈尺関節は変形し、側面像で尺骨頭は掌側脱臼していた。MRIでは冠状断像で橈骨尺側切痕は掌側に大きく傾斜し、矢状面像で尺骨頭の変形も高度であった。前額画像では手根管の両端にダンベル状の屈筋腱腱鞘滑膜炎が描出され、占拠性病変による手根管症候群と診断した。手根管開放術に加え、屈筋腱腱鞘滑膜切除術を施行した。術中、滑膜を切除したところ変形した尺骨頭が露出し、尺骨頭の機械的刺激が滑膜炎の原因と考えてSauve-Kapandji法を追加施行した。すると、術前には触れなかった肘部前方の膨隆が触れるようになり、橈骨頭の脱臼が判明し、肘屈曲位で容易に整復されるため、その位置で外固定を行った。採取した滑膜の病理所見から化膿性炎症が疑われたが、培養検査は陰性であった。術後8日に上腕三頭筋腱で輪状靱帯を再建し、Kirschner鋼線で近位橈尺関節を仮固定した。術後1年現在、症状は消失し、橈骨頭の再脱臼は認めていない。
©Nankodo Co., Ltd., 2011