発行日 2011年5月1日
Published Date 2011/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2011226889
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1999年7月以降、腱鞘炎により治療した例で、関節リウマチ、ホルモン療法、透析例を除いた890例1610指を対象にA群(糖尿病)482例957指、B群(非糖尿病)408例653指に分け、糖尿病に伴う腱鞘炎の臨床像を非糖尿病例と比較検討した。初診時年齢はA群がB群に比べ有意に高かった。性別はA群で男性が女性より僅かに多く、B群で女性が男性の約1.8倍と男女の分布に有意差がみられた。罹患指の分布には両群で有意差がなかった。母指の発生率はA群20%、B群36%でA群は母指の発生率が低くなっていた。使い過ぎのエピソードがみられた率はA群がB群に比べ有意に低かった。左右、腱鞘炎の重症度、手根管症候群とde Quervain症候群の有病率は両群間で有意差がなかった。ステロイド注入後の再発率の経時的変化をワンファクターANOVA検定により検討した結果、A群中の各群とB群との間に有意差はなかった。糖尿病に伴う腱鞘炎は非糖尿病例に比べ、発症年齢がやや高く、男性にやや多く、母指の発生が少なく、使い過ぎのエピソードが少ないという特徴があり、非糖尿病例とは発症要因や病態が異なる可能性が考えられた。HbA1c8%以上の糖尿病例ではステロイド注入後12ヵ月時点での再発率が有意に高く厳格な血糖コントロールの重要性が示唆された。
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