発行日 2011年6月1日
Published Date 2011/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2011288562
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43歳女。小学生時より左母指に腫瘍があり、徐々に増大した。左母指尺側から手掌にかけて弾性軟の軟部腫瘤を認め、単純X線では母指基節骨掌尺側の腫瘤による圧排像を認めた。MRIの冠状断像ではT1、T2強調像ともに高信号の腫瘍内に、低信号の蛇行した索状構造を呈した神経束を認め、水平断像ではT1、T2強調像ともに高信号の腫瘍内に、低信号の同軸ケーブル様像を呈した神経束を認めた。吸引細胞診から脂肪腫と診断して手術を施行し、手術所見で母指尺側指神経とそれを取り巻く線維性脂肪が末梢にかけて次第に肥大し、指尖部では神経幅が約1cmとなっていた。腫瘍が神経を含むため全切除は困難と判断し、神経周囲の脂肪組織を部分的かつ可及的に切除した。病理組織学的所見で膠原線維の増生と成熟脂肪組織の混在を認め、線維脂肪性肥大と診断した。術直後に左母指尺側の知覚過敏を認めたが、術後1年で改善し、術後2年の現在、再発や知覚障害は認めず、左母指最大周囲径は術前82mmが73mmへと縮小した。
©Nankodo Co., Ltd., 2011