発行日 2006年1月1日
Published Date 2006/1/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2006105265
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50歳女.介護中,左母指指節間(IP)関節を受傷した.2~3日で左母指IP関節の疼痛,腫脹は軽減したが,その後,母指の伸展傷害に気付き,受傷2ヵ月後に疼痛と可動域制限を主訴に受診した.左母指IP関節の自動伸展は-30°,屈曲は60°で,手背部に長母指伸筋腱のレリーフを触知した.単純X線写真では掌側に辺縁の滑らかな骨片を認めたが,背側に骨折はみられなかった.仕事上の支障を避けたいという患者希望で,受傷後3ヵ月で手術を行った.長母指伸筋腱は末節付着部の近位で瘢痕状態となっていた.この癒合した腱は強度もあり,牽引しても断裂することはなかった.瘢痕部で切離し,中枢端を末節骨にpull-out wiringした.末梢断は重ね合わせ,中枢側に結節縫合した.術後4ヵ月の最終診察時,IP関節の進展は0°,屈曲は40°で,仕事に支障なく復職した.陳旧例であるこの症例には,過伸展での固定を避けるために瘢痕組織の全切除を行わない方法が有用であったと思われた
©Nankodo Co., Ltd., 2006