発行日 2007年10月1日
Published Date 2007/10/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2008012103
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Tossy分類III度の肩鎖関節脱臼10例に対し、生体吸収性のポリ乳酸製靱帯補強材(PL-LAD)を用いて、肩鎖関節の仮固定や内固定材の抜去の不要なaugmentation法を加味した手術を行い、その短期成績を検討した。本術式は鎖骨-肩甲骨間の金属固定を行わず術直後よりPL-LADに負荷がかかり、これが生体内に吸収されることで再建した烏口鎖骨靱帯にその力学負荷が移行していくという補強法であった。対象は本手術後1年以上経過観察を行った男性10例で、手術時平均年齢40.3歳、受傷から手術までの期間は平均11.7日、術後経過観察期間は平均28ヵ月であった。術後、PL-LADによる局所の炎症所見やアレルギー反応は認めず、川部らの評価法による最終経過観察時の臨床成績は平均92.3点であった。単純X線における術後の再亜脱臼値は平均3.5mmで、これらは術後2週以内に生じたが進行傾向は認めなかった。9例に鎖骨遠位端のバンド締結部の骨吸収像を認めたが、同部の圧痛や脆弱性はなかった。このうち2年以上経過した6例では同部の骨皮質が次第にリモデリングされている像を認めた。本術式は従来法の問題点を回避し、簡便で手術が1回で済み、後療法を早期から制限なしで行うことができ、有用な手術法と考えられた。
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