発行日 2007年7月1日
Published Date 2007/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2007274048
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症例は自転車走行中に転倒受傷した34歳男性で、初診時単純X線像にてTossy分類Grade IIIの右肩鎖関節脱臼を認め、著者等が考案した傍関節釘交叉法を用いて外科的整復術を施行した。術中所見では肩鎖関節上と烏口鎖骨関節に皮切を加え、鎖骨からの筋剥離は最小限とし烏口鎖骨靱帯の展開も筋線維方向に裂くのみとした。烏口鎖骨靱帯の断端に縫合糸をかけておき、鎖骨遠位端部を背側方向にK(クリシュナー)鋼線で貫き更に先を長く出した。肩鎖関節を整復しながらK鋼線を肩峰外側より刺入し、この時にK鋼線は肩鎖関節を貫かず鎖骨のすぐ背側を通し、鎖骨を貫いておいたK鋼線に対し上で接するように(肩鎖関節外でそのすぐ内側でK鋼線が交叉するように)に進めた。その際には前十字靱帯再建用アングルガイドを用いると容易であった。縫合糸アンカーを肩峰前縁部に刺入して接続している縫合糸を鎖骨に挿入したK鋼線にかけて締結後に肩鎖・烏口鎖骨靱帯を縫合したが、術中に完全挙上しても肩鎖関節は安定していた。これに追加して鎖骨を少しオーバードリリングのうえ鎖骨烏口突起間をK鋼線で貫き、10日後に抜去した。後療法は術翌日から外固定を除去し90度までの自動運動を痛みに応じて許可し4週後に150度まで、8週後に制限なしとした。術後1週間で職場復帰したが挙上しても肩鎖関節は安定しており、その後も再脱臼は認めず可動域制限や疼痛も認めておらず、術後1年時のJOAスコアは100点であった。以上より本術式は侵襲が少なく肩鎖関節や肩峰下組織を損傷せず行うことができ、固定財抜去を適切な時期まで待機できるなどの利点があると考えられた。
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