発行日 2006年5月1日
Published Date 2006/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2006197912
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交通外傷を受傷し,腹痛,両下肢痛を生じ救急搬送された.初診時,腹痛,両下肢対麻痺,Th12以下の知覚鈍麻,L1以下の知覚消失,両下肢腱反射消失を認め,膝窩動脈および足背動脈は触知不能であった.腹部造影CTでは腹腔内のfree air,血腫,更に腹部大動脈,大腿動脈の強い石灰化を認め,腸断裂の診断で緊急手術を施行した.術後両下肢は硬直,皮膚は蒼白で,2日後より両下肢壊死が出現し,腎機能の低下も認めたため人工透析を開始した.13日目に腹腔内感染を生じたため緊急ドレナージを行なったが,その後全身状態が悪化し,27日目に多臓器不全により死亡した.下腿はほぼ全体に壊死し,大腿にも一部壊死所見を認めた.病理解剖所見で下行大動脈は広汎に解離しており,分岐部以下に血栓を認め,脊髄に梗塞,虚血などの異常は認めなかった.以上より,外傷性大動脈解離により発生した塞栓による急性動脈閉塞症と診断した
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