発行日 2006年2月1日
Published Date 2006/2/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00764.2006128140
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高齢者に発生した2例の腸腰筋血腫を経験した.症例1:66歳女.乗用車の助手席に乗車中に側方から単車に衝突され両足を踏ん張ったところ,2時間後に右股関節周囲痛が出現し歩行困難となり,近医にて加療を受けるも増悪し,原因不明として紹介された.下肢知覚障害なく,単純X線写真では骨折はなく,強い右鼠径部痛を訴え,脆弱性骨折を疑ってMRIを施行したところ,腸腰筋血腫もしくは腸恥滑液包炎を疑う所見を得た.触診にて右腸骨窩に弾性硬,表面平滑な腫瘤を触知し,受傷から27日後に再度MRI検査を行ったところ,右腸骨筋付近に同様の病変を認めた.以上から血腫を疑って症状が改善しないため手術を行ったところ,腸骨筋は断裂しており,大腿神経を変性した腸骨筋が圧排していた.組織像では,横紋筋の断裂と出血性肉芽腫性病変を認めた.術後2ヵ月で受傷前と同じ状態に復帰し,退院した.症例2:87歳女.特に誘因なく右股関節痛が出現し,翌日には歩行困難となったことを契機に右下腹部から右股関節に圧痛を認め,右腸骨窩に弾性硬,表面平滑な腫瘤を触知し,右大腿前面の知覚鈍麻を認めた.CTにて右腸腰筋に腫瘤陰影を認め,精査目的で入院とした.発症から5日目にMRIを施行し,悪性腫瘍が疑われた.家族の希望もありペインクリニックで経過観察を行ったところ,腹部腫瘤は徐々に縮小し疼痛も改善し発症より23日後のCTにても腹部腫瘤の縮小を認め,約1ヵ月半で疼痛もほぼ消失し,発症より67日後のMRIでも腸腰筋に連続する腫瘤は縮小していた.以上の経過から,特発性の腸腰筋内血腫であったと診断した
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