発行日 2014年12月1日
Published Date 2014/12/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2015122712
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66歳男性。左水腎症に対する尿管形成術の既往があった。今回、腰痛と歩行時の両下肢痛から腰部脊柱管狭窄の疑いにて受診、プロスタグランジンE1の点滴と内服加療を受けていたが経過中に間欠性跛行の増悪がみられた。MRIでは脊柱管狭窄の程度は軽いものの症状の改善は認められなかった。一方、下肢の脈拍は微弱で、足首-上腕血圧比から閉塞性動脈硬化症による間欠性跛行が疑われ心臓血管外科へ紹介となったが、精査により大動脈高位閉塞を伴ったLeriche症候群と診断され、手術目的で入院となった。腹部造影マルチスライスCTでは腹部大動脈は右腎動脈の高さから右総腸骨動脈、左外腸骨動脈遠位部まで閉塞していたが、腹壁動脈の側副血行で下肢の血流は保たれていた。左腎臓は下極枝のみで還流され、腎実質は高度に萎縮していたが、手術では右側腎のみで機能しており、全身状態も良好であることから術中に右腎保護を行う解剖学的血行再建術が選択された。その結果、術中に腎動脈上の遮断を要したが、遮断中は機能腎の腎動脈よりcold perfusionを用いた腎保護で術後の腎機能障害を防ぐことができた。以後、輸液と利尿薬投与により第1病日までの尿量は4080mlに、更に第2病日にはクレアチニン値の上昇が認められたが、第4病日には術前値に回復して、患者は術後2週間目に退院となった。
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