発行日 2014年12月1日
Published Date 2014/12/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2015122709
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70歳代男性。3年前に腹部超音波検査で腹部大動脈瘤(AAA)を指摘、今回、経過観察中に瘤径の拡大がみられ、手術適応として入院となった。術前CTでは45mmの嚢状AAAが認められ、下腸間膜動脈は瘤から起始していたが、瘤内血栓部位は閉塞していなかった。開腹胃切除術の既往があることから、ステントグラフト留置術(EVAR)が施行されたが、患者は術後、不穏となり、頻呼吸のため急遽気管挿管が行われた。全身麻酔に移行後、ステントグラフトの後拡張が行われたが、血管造影では明らかなエンドリークはなく、両側内腸骨動脈は温存されていた。以後、血行動態や呼吸状態に問題なく手術室で抜管後に病棟に帰室、翌日より水分開始、2日目より食事開始したが、4日目より腹痛と下血、炎症反応上昇を認めたため絶食とした。腹部CTを行なったところ、S状結腸壁には肥厚が確認され、虚血性腸炎が疑われ、絶食による治療は継続されたが、EVAR後11日目の大腸内視鏡ではS状結腸の潰瘍ほか、全周性狭窄が認められ、結腸切除が必要と判断された。そこで、EVAR後19日目に開腹手術を施行した結果、術中所見ではS状結腸は高度の炎症で後腹膜との癒着に加え、S状結腸狭窄部位周辺は漿膜まで全層の壊死が認められ、壊死病変の口側と肛門側でS状結腸を離断した。尚、術後は腸閉塞および誤嚥性肺炎を来したが初回EVAR後71日目に退院となり、目下、EVAR後2年経過で虚血性腸炎の再燃は認められていない。
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