発行日 2014年9月1日
Published Date 2014/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2015062453
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44歳女性。左乳房腫脹の増大を主訴に他院を受診、精査により乳腺腫瘍が疑われ、著者らの施設の乳腺外科へ紹介された。所見では左乳房全体が腫脹、硬化しており、左腋窩には転移を疑うリンパ節腫大が認められた。マンモグラフィーでは左乳腺は全体に収縮しており、約8×7cmの境界不明瞭な腫瘤影が認められた。また、乳腺超音波では左乳腺全体が不整な低エコー像を呈し、左腋窩リンパ節腫大を多数認められた。そのほかFDG-PETでは左乳房にFDGの著明な集積が認められ、複数の腋窩リンパ節への集積も確認されたが、遠隔転移を疑わせる所見はみられなかった。以上、これらの所見を踏まえて、針生検もあわせて行なったところ、病理組織学的所見は浸潤性乳管癌で、体液性高カルシウム血症を伴う炎症性乳癌と診断された。以後、患者は悪心や嘔吐、傾眠などの高カリウム血症の症状が認められたが、補液とzoledronate点滴静注により症状は速やかに改善し、4日目には血清カルシウムは正常化して6日目に退院となった。更に次いで初診から36日目よりは外来化学療法を開始し、FEC100療法およびdocetaxel療法を各々4クールが施行された。その結果、左乳房腫瘤は著明に縮小し、FDG-PETでも左乳房への集積の低下がみられ、腋窩リンパへの集積も消失した。最終的には化学療法終了1ヵ月後に左乳房切除術+腋窩リンパ節郭清術が施行され、治療効果はgrage 2、T1bN1aM0、Stage IIAであった。尚、目下、初診より1年6ヵ月経過するが再発は認められていない。
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