消化器手術における抗菌薬の適正使用
周術期における抗菌薬の適正使用 食道癌、胃癌
福田 俊
1
,
森 和彦
,
清水 伸幸
,
瀬戸 泰之
1東京大学 胃食道外科
キーワード:
胃腫瘍
,
抗細菌剤
,
手術創感染
,
消化器外科
,
食道腫瘍
,
予防的抗菌剤投与
,
医薬品適正使用
,
人工呼吸器関連肺炎
Keyword:
Anti-Bacterial Agents
,
Esophageal Neoplasms
,
Digestive System Surgical Procedures
,
Surgical Wound Infection
,
Stomach Neoplasms
,
Antibiotic Prophylaxis
,
Pneumonia, Ventilator-Associated
pp.580-583
発行日 2011年6月1日
Published Date 2011/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2011218996
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食道癌、胃癌の周術期に抗菌薬を投与する状況は大きく2とおりに分かれる。手術部位感染症(surgical site infection:SSI)対策としての予防的抗菌薬投与と感染性合併症の治療のための投与である。予防的抗菌薬投与は、あくまでも術中の細菌曝露に対する感染を、術中をとおして組織中の抗菌薬濃度を維持することにより予防するものである。上部消化管手術では術中曝露される菌はブドウ球菌や連鎖球菌であることが多く、第1世代のセファロスポリン系薬剤の投与が行われることが多い。一方で治療的抗菌薬投与では、縫合不全や腹腔内膿瘍を含めたSSI発生時、あるいは肺炎や尿路感染といった遠隔臓器の感染や敗血症などの全身感染時に投与されるものである。特に食道癌手術では術後肺炎や人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia:VAP)は致死的合併症となる危険性があり、十分な病態、感染源の把握のもと適切な抗菌薬の投与が望まれる。また、VAPでは耐性菌感染の危険性も高く、より慎重な抗菌薬投与をしなくてはならない。
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