発行日 2010年3月1日
Published Date 2010/3/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2010155758
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47歳男。心窩部から上腹部の痛みが出現し、膵酵素の上昇、CTで膵頭部に内部均一なlow density massを認め、膵炎と診断し保存的治療を開始した。症状の消失、腫瘤の縮小を認めたため退院したが、2週間後に再度腹痛が出現し、CTで腫瘍の増大を認め再入院となった。腹部MRIのT1強調画像では内部に高信号を含む低信号の腫瘍を膵頭部に認め、T2強調画像では中心部高信号、大部分が低信号を呈し、造影でも増強効果はみられなかった。上・下膵十二指腸動脈造影では、早期から小さなpseudoaneurysmが広範囲に多数描出された。また、上部消化管内視鏡検査ではVater乳頭部の口側に一部自壊し潰瘍を形成する腫瘍性病変を認め、組織生検で多形性に富む紡錘型細胞の増殖を認めた。膵頭部悪性腫瘍の術前診断で膵頭十二指腸切除術を施行し、肉眼所見で腫瘍は約4×6cm、内部出血、壊死を伴う白色充実性であった。病理組織所見では異型の強い多形性に富む紡錘型の腫瘍細胞がみられ、一部に巨細胞を伴っていた。免疫組織所見と併せ、退形成性膵管癌多形細胞型と診断した。術後の補助療法は希望により行わず、半年後に局所再発し、その後肝転移を来たして約1年後に他界した。
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