発行日 2008年7月1日
Published Date 2008/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2008258177
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症例は65歳女性で右側腹部痛と頻回の嘔吐を主訴に来院し、腹部CTにて後腹膜に手拳大の腫瘤を認め、精査加療目的で入院となった。入院時、高血圧と空腹時高血糖、炎症反応を認め、肝機能・腎機能と腫瘍マーカーは基準値内であった。腹部エコーでは十二指腸と下大静脈を圧排する類円形、境界明瞭な低エコー腫瘤を認め、腹部CTでは十二指腸・膵頭部と下大静脈を圧排するように発育する径8cm大の腫瘤(辺縁に造影効果を有し中心部に壊死又は血腫を疑わせる低濃度域が存在)が認められた。腹部MRIではT1強調像で筋肉と等信号、T2強調像で不均一な高信号を呈する腫瘤を認めた。以上の所見から後腹膜腫瘍の診断にて開腹手術を施行、術中所見では腫瘍は結腸間膜背側の後腹膜腔に十二指腸下行脚と下大静脈に接するように存在、十二指腸と強固に癒着していたため膵頭十二指腸切除術にて摘出した。摘出標本の病理組織学的所見では大小不同の異型核と豊富な胞体を有する腫瘍細胞を認め、免疫組織化学染色ではクロモグラニン染色・S100蛋白陽性所見から後腹膜に発生することは稀なparagangliomaと診断された。術後経過は良好で、術後1年8ヵ月経過の現在、転移・再発徴候は認めていない。
©Nankodo Co., Ltd., 2008