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症例は46歳女性で、約3年前から右乳房内の腫瘤を自覚、今回腹部膨満感・嘔気・嘔吐が出現したため受診、腹部エコーにて多量の腹水を認め精査加療目的で入院となった。入院時、右乳房EABからCD領域に潰瘍を伴う可動性不良な径5cm大の腫瘍を認め、左乳房D領域にも径2cm大の腫瘍を触知し、腹部は多量の腹水で腫大していた。腹部MRIでは多量の腹水と腹腔内に径1cm以下の結節を多数認め、子宮の頭~外側にそれぞれ径4cm大・3cm大に腫大した卵巣と思われる結節を認めた。胸腹部CTでは両側肺に小結節を認め、右乳房E領域に胸筋浸潤を伴う6×4cm大の腫瘍と左乳房D領域に径2cm大の棘状物を伴う結節を認めた。肝・胆嚢・膵・腎には腫瘍性病変は認めず、骨シンチでは胸腰椎・両側腸骨・右寛骨・右恥骨・胸骨柄にRI取り込み亢進を認めた。腹水細胞診はClass IV~V,右乳房腫瘍の生検では皮膚浸潤を伴う浸潤性乳管癌であった。以上の所見から右乳房癌の骨・両側肺・腹腔内及び左乳房転移と診断した。治療ではまず右乳房切除+リンパ節郭清と下腹部皮膚を用いた遊離植皮を施行、2ヵ月後に両側卵巣摘出+大網切除を行い腹腔内にリザーバーを留置してcisplatin(100mg)を注入し、腹水が消失した術後4ヵ月後に退院となった。退院8ヵ月後に左乳房腫瘍が触れるようになり左乳房切除+リンパ節郭清を施行、病理組織学的所見では右乳房癌はsolid-tubular type,左乳房癌はscirrhous typeの浸潤性乳管癌であった。手術前後にZOL・TAM・TXLなど各種内分泌化学療法を施行、以後は腹水の貯留はなく術後約7年経過の現在、外来にて経過観察中である。
©Nankodo Co., Ltd., 2008