発行日 2008年7月1日
Published Date 2008/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2008258172
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著者等は直腸脱の形態学的特徴である肛門括約筋の弛緩・骨盤底の弱体化・直腸の直線化を改善できる新しい手術法を開発した。2006年4月~2007年6月に完全直腸脱6症例(全例女性、63~86歳、全例Tuttle分類2度)に対して施行した新しい会陰式手術法(大見・稲葉式肛門管形成術)について報告した。本術式は直腸・S状結腸に全く手術操作を加えずに肛門管を補強するだけの方法で、まず肛門管後壁の内括約筋を後半周にかけて肛門管の内腔側に翻転し、円筒状の壁にして肛門管の後壁を約2cm腹側に偏位させ、円筒形となった後壁は屈曲しにくく腸管の脱出を抑える。更に肛門縁の後半周に沿った冠状皮膚切開創を放射状の皮膚縫合線にすることで、肛門の後壁を口側に押し上げて骨盤底の挙上を図るものである。その結果、術後経過観察平均12(6~20)ヵ月間では全例で直腸脱出はなく、6例中3例では排便障害は全くない状態であり、2例では下痢や排便を我慢した時に失禁する状態であった。86歳症例は手術後9ヵ月経過の現在まで外来診察は1回のみで診察時には直腸脱出はなく、その後も脱出はないとのことであった。この症例を除く5例の排便機能をWexner's scoreで評価すると全例で点数の低下がみられ、3例は0点と良好であった。以上より、症例数は6例と少ないが、全例で術後6ヵ月以上再発を認めず、本術式は有用と考えられた。
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