発行日 2007年12月1日
Published Date 2007/12/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2008117113
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症例は39歳女性で、約1年半前、転倒した際に右乳房を強打した。視触診では右乳房上内側に無痛性の硬い腫瘤を触知し、腫瘍マーカー、乳腺超音波検査、乳腺CT、乳房腫瘤の穿刺等から乳房の外傷性脂肪壊死を疑った。その後、来院がなかったが、約半年後、腰痛、歩行障害が出現した。マンモグラフィ、乳腺CT、骨シンチグラフィ、右乳房腫瘤の切除生検から骨転移を伴った進行性乳癌と判断し、胸筋合併右乳房切除術を行った。病理組織像は、右乳腺はほぼ全体が浸潤性乳管癌で、腋窩リンパ節転移、皮下脂肪及び大胸筋への浸潤を示した。右乳房上内側の腫瘤は外傷性脂肪壊死に伴う仮性嚢胞と考えられ、嚢胞壁の瘢痕化した部分に乳管癌の微小浸潤像を認めた。術後、抗癌薬治療等を行ったが、手術から1年3ヵ月後に死亡した。この症例は、右乳房に生じた外傷性脂肪壊死に、その後、別の部位に発生した乳管癌が進展・浸潤したと考えられた。
©Nankodo Co., Ltd., 2007