臨床経験
胸骨縦切開アプローチでエタノール注入を施行した左房と肺動脈を圧迫する気管支嚢胞
松本 和久
1
,
向原 公介
,
豊川 健二
,
西田 卓弘
,
金城 玉洋
1鹿児島大学 心臓血管外科
キーワード:
Ethanol
,
開胸術
,
気管支原性嚢胞
,
血管疾患
,
MRI
,
心臓疾患
,
肺動脈
,
経食道心エコー図
,
病巣内投与
,
胸部CT
Keyword:
Ethanol
,
Bronchogenic Cyst
,
Heart Diseases
,
Magnetic Resonance Imaging
,
Pulmonary Artery
,
Thoracotomy
,
Vascular Diseases
,
Injections, Intralesional
,
Echocardiography, Transesophageal
pp.899-903
発行日 2014年9月1日
Published Date 2014/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2015000772
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56歳女。安静時胸痛、咳嗽、起坐呼吸を主訴とした。CTで気管前~大動脈弓下で右肺動脈後方にあり、右肺動脈を前方に圧排し、右上肺動脈と左房天井を圧排する造影されない78×62×69mmの嚢胞性病変を認めた。MRIでは辺縁平滑、境界明瞭な嚢胞性腫瘤で、内部はT1強調像でやや均一な淡い高信号、T2強調像で均一な高信号を示し、内部に充実性成分はなかった。以上より気管支嚢胞と診断し、手術を行った。胸骨・心嚢縦切開し、術中の経食道エコーでは嚢胞の位置関係は明瞭であったが、嚢胞壁は炎症性に肥厚し周囲組織と境界不明瞭で、胸膜切開による側面からの確認を加えても嚢胞壁へのアプローチは困難であり嚢胞切除は不可能と判断した。肉眼的に嚢胞壁を確認できたのは上大静脈の右側のみであり、ここから内容物を吸引し、次いで嚢胞内にトロッカーカテーテルを誘導して無水エタノールを注入した。嚢胞の内容液の細菌培養は陰性で、CEAとCA19-9が高値を示した。切除した嚢胞壁は線維性結合組織と上皮細胞を含む、悪性所見のないものであったが、病理診断はつかなかった。術後症状は消失し、嚢胞は経時的に縮小し、術後9ヵ月時点で嚢胞の再拡大はない。
©Nankodo Co., Ltd., 2014