発行日 2012年10月1日
Published Date 2012/10/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2013124377
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55歳女性。突然に生じた右下肢の冷感としびれを伴う痛みを主訴に救急外来受診なり、神経学的異常所見が認められないことから帰宅し、経過観察を行うこととなった。だが、安静臥床から約1時間後に呼吸困難が出現、急速に状態は悪化したため、直ちに気管内挿管下の人工呼吸を開始したところ、モニター心電図上は正常洞調律であったが、心停止の状態となった。そこで、心蘇生後に行われた胸部X線では両側の著明な肺うっ血がみられた。また、心エコーでは左房内に34×28mmの腫瘤像が認められ、これが拡張期に僧房弁口に嵌入し左室流入路の狭窄を生じさせていた。以上より、本症例は左房内腫瘍による僧帽弁狭窄から生じた急性心不全および肺水腫、更に腫瘍塞栓による右下肢急性動脈閉塞の併発と診断され、緊急に左房内腫瘍の切除と摘出、右下肢動脈の塞栓摘除術が施行された。その結果、左房内腫瘍、右腸骨動脈から摘除された塞栓子はいずれも病理組織学的に粘液腫であった。尚、経過は良好で、肺うっ血は急速に改善し、術後28日目に患者は軽快退院となった。
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