特集 これだけは知っておきたい手術の適応とタイミング—注意したい疾患45
巨大肺嚢胞症
川上 稔
1
,
仲田 祐
1
1東北大学抗酸菌病研究所外科部門
pp.1004-1008
発行日 1979年6月20日
Published Date 1979/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407207224
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■なぜ内科治療とのControversyになるか
巨大肺嚢胞症の定義,分類,成因については,現在,見解が統一されていない.ここでは本症を,成因,基礎疾患に関係なく,check valve mech—anismあるいは不明の原因によつて腫大した含気性の嚢胞が1側胞腔の3分の1以上を占め,隣接肺組織を圧排,萎縮させ,時にはこのために呼吸障害を起こすこともある病態をさすことにする.巨大肺嚢胞症をこのように定義すると,本症はほぼ全年齢層に分布し,乳児の時期に見られる先天性肺嚢胞,小児,成人の肺感染後の巨大肺嚢胞,壮年,老年の嚢胞性肺気腫はいずれも本症に発展しうる,成因がどうであれ本症には,①壁の破裂による気胸,②肺組織が圧迫されて起こる低肺機能あるいは呼吸不全,③嚢胞内の感染,出血,④嚢胞内感染より波及する胸膜炎,肺炎などの合併症の可能性が絶えず潜んでいることを前置きとし,以下,他科との問題点に触れる.
まず小児科との場合,稀とはいえ,乳幼時の先天性肺嚢胞(congenital air cyst of the lung)がある.一側胸腔の大部分を占め,呼吸困難のために,生後3週で左肺の摘除が行なわれた報告もある1).症状は原因不明の呼吸困難,チアノーゼを呈し,病側胸郭が打診上極度の鼓音を呈し,呼吸音が消失,心および縦隔が対側に押しやられ,自然気胸と誤まつて外科に廻されたり,時には横隔膜ヘリニア,気管支異物によ無気肺,先天性閉塞性肺葉性肺腫(congenital obstructive lobar emphysema)との鑑別が困難で悩される.
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