特集 性決定分化の制御システム:疾患性差・性転換をもたらす♂化・♀化のせめぎ合い
哺乳類の性分化と性的可塑性
篠村 麻衣
1
,
張替 香生子
,
金井 克晃
1東京大学 大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程
キーワード:
Sertoli細胞
,
シグナルトランスダクション
,
顆粒膜細胞
,
性分化
,
哺乳類
,
発生遺伝子発現調節
,
Sex-Determining Region Y Protein
,
SOX9転写因子
,
線維芽細胞増殖因子9
,
Wnt4 Protein
,
可塑性(組織)
,
Forkhead Box Protein L2
,
DMRT1 Protein
Keyword:
Forkhead Box Protein L2
,
Granulosa Cells
,
Mammals
,
Sertoli Cells
,
Sex Differentiation
,
Signal Transduction
,
Gene Expression Regulation, Developmental
,
Sex-Determining Region Y Protein
,
Fibroblast Growth Factor 9
,
SOX9 Transcription Factor
,
Wnt4 Protein
,
DMRT1 Protein
pp.151-157
発行日 2013年1月22日
Published Date 2013/1/22
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哺乳動物の性分化は,胎児性腺の支持細胞でのY染色体上の精巣決定遺伝子SRY(HMG box型転写因子)の発現の有無により開始される.一過性に発現するSRYは,同じHMG box型転写因子であるSOX9を活性化し,SOX9の高発現が維持されることにより,セルトリ細胞の分化・精巣形成を誘導する.雌の性腺では,SOX9発現が起こらず,少し遅れてFOXL2(Forkhead型転写因子)の発現が開始し,顆粒膜細胞の分化・卵巣へと発達する.SRY消失後の性分化後期では,支持細胞においてSOX9発現が維持(セルトリ細胞の雄性の維持)されるかどうかは,雄型のFGF9シグナルと雌型のWNT4シグナルのバランスにより制御される.出生後,セルトリ細胞のSOX9発現は線虫・ハエから進化的に保存された精巣化因子DMRT1(DMドメイン転写因子)の作用により維持される.一方,生後の卵巣の顆粒膜細胞では,エストロゲンとFOXL2の作用によりSOX9発現が抑制され,雌性が維持されている.マウスでは,性分化期から生後まで,異なった雌雄の性分化因子のバランスによりそれぞれの支持細胞の性が維持されており,成体の精巣,卵巣においても性的可塑性が存在することが明らかとなってきた.本稿では,哺乳動物のSRYによる性分化初期から出生後の雌雄の性転換についての最近の知見を解説する.
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