特集 新メカノトランスダクション:工学との融合が明らかにする力学刺激センサーの動作とシグナル伝達
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小椋 利彦
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1東北大学加齢医学研究所 神経機能情報研究分野 教授
pp.914-916
発行日 2014年8月22日
Published Date 2014/8/22
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時々,D'Arcy Wentworth Thompson著「On Growthand Form」1) を読む.初版が1942 年の出版で約70 年以上も前に書かれた本なので,当然遺伝子は1 つも出てこない.遺伝子についてまったく記述せず,ただ,様々な動物・植物の形を時に数学的・物理学的な視点で論述している.かたや70 年後の現代の医学・発生生物学の論文では遺伝子解析が主役で,ビッグデータ化がますます進み,遺伝子を使わず,生物の形態や生理を論じた報告を見つけることは難しい.しかし,遺伝子の機能がある程度わかって,それで生物の形や機能を理解できたかといえば,自信を持ってYes と言える研究者はどれほどいるだろうか?また,次のように問うこともできる.今,未知の生物のDNAが見つかったとする.この生物のゲノム情報を完全解読してその形態や生理をどれほど正確に予測できるか?また,ヒトゲノムを約30 億塩基対とすると,その情報量は約800Mb(私のMS Word ファイルの12 個分).ヒト一人の情報として800Mb で十分なのか?生物の形の理解に十分ではないと感じるなら,D'ArcyThompsonの考え方と現代の医学・生物学を融合して新しい視点を提示することができないだろうか? そのためには,どのような研究を展開すべきなのか? そしてゲノム解読が格段に進んだ今,遺伝子やタンパク質の機能についても新しい視点を提示したい.
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