特集 臓器代謝ネットワーク:分子機構とその破綻による病態から臨床的意義まで
Overview
小川 佳宏
1
,
菅波 孝祥
2
1東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 分子内分泌代謝学分野(糖尿病・内分泌・代謝内科) 教授
2東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 臓器代謝ネットワーク講座特任教授/科学技術振興機構 さきがけ
pp.486-488
発行日 2014年4月22日
Published Date 2014/4/22
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ホルモンや生理活性物質をメディエーターとする内分泌系,炎症細胞や免疫細胞が担う免疫炎症系,自律神経(交感神経・副交感神経)による迅速かつ特異的な反応が特徴的な神経系は,時々刻々と変化する外的環境に対する恒常性維持機構として不可欠のものである.我々は日常的に様々なストレスに曝されて生活しており,これらの恒常性維持機構により健康な状態を維持しているが,ストレスの質や量の変化に適応しきれずに臓器機能に変調をきたすと様々な疾患を発症することになる.従来,基礎医学では,生体の恒常性維持機構としての内分泌系,免疫炎症系,神経系は主に生理学がカバーしている.これに対して,臨床医学では,内分泌代謝学では古典的な内分泌疾患である甲状腺疾患やクッシング症候群などの副腎疾患,免疫炎症学では慢性関節リウマチやSLE(全身性エリテマトーデス)などの自己免疫疾患,神経学ではアルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患のように各専門分野に特有の疾患を対象としてきた.一方,生活習慣病を中心とする慢性疾患の発症・進展に,細胞レベルや個体レベルの代謝異常が密接に関与することが明らかになってきた.しかしながら,臓器間の代謝恒常性維持機構(臓器代謝ネットワーク)の全貌やその破綻による疾患発症の分子機構に関する研究は,いまだ端緒に付いたばかりである.
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