特集 次世代生物学の扉を開く 1細胞解析法
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菅野 純夫
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1東京大学大学院新領域創成科学研究科 メディカルゲノム専攻ゲノム制御医科学 教授
pp.234-236
発行日 2015年2月22日
Published Date 2015/2/22
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細胞は生体を構成する究極のユニットであり,1細胞レベルの研究が疾患をはじめとする生命現象を理解するうえで重要であることは論を待たない.実際,1細胞レベルの解析は顕微鏡を用いた形態学的手法として発展し,医学生物学における主要な解析法となっている.特に,GFPに端を発する蛍光イメージングは,細胞内でのタンパク質の挙動を分子レベルかつ経時的に解析することを可能にし,現代の医学生物学研究になくてはならない解析手段となっている.では,なぜ今あらためて,1細胞解析が熱いのだろうか.今回の1細胞解析フィーバーは,ヒトゲノムプロジェクトを契機として登場した網羅的解析,いわゆるオミクス解析が,少なくともゲノムやトランスクリプトームなど核酸系の解析で1細胞レベルに到達したことに端を発している.現代の分子生物学の考え方では,生命は核酸やタンパク質をはじめとする多種類で多数の分子からなるシステムであり,そのシステムがどのように動いているかを理解することが生命の理解に他ならないとされる.そのためには,生命を構成する多種多数の分子の挙動をまず測定し,記載する必要がある.それはちょうど,古典物理学の成立時にティコ・ブラーエが天体の運行を精密に大量に観察し,記載したことに対応する.物理学は,その後ケップラーがそのデータに潜む数理的関係を発見し,ニュートンがその関係をも含めて運動を説明する力学法則を提案,と進んだ.ニュートンが提案した法則は,今も様々に応用され,現代の社会を支える不動の柱となっている.
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