特集 免疫応答の負の制御:免疫恒常性の維持と疾患治療への応用
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坂口 志文
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1大阪大学WPI免疫学フロンティア研究センター
pp.1202-1204
発行日 2013年11月22日
Published Date 2013/11/22
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免疫系は病原微生物などの非自己抗原に反応し,これを駆逐するが,自己抗原に反応することはなく,正常自己組織を傷害することはない.しかし,強力な自己免疫応答は自己免疫疾患を起こす.また,体外,体内の非自己抗原であっても,それに対する免疫応答が過剰,持続的であればアレルギー,免疫病理学的疾患を起こす.例えば,腸管で吸収される食物抗原に対する免疫応答はアレルギーのかたちをとり,腸内細菌に対する持続的過剰免疫応答は腸管組織を傷害し,炎症性腸炎を起こす.では,自己に対する免疫不応答,すなわち免疫自己寛容は,正常な個体でどのように確立され,維持されるのであろうか.また,非自己抗原に対する生理的な免疫応答は許しても,組織傷害を伴うような異常,過剰な免疫応答はいかにして阻止され,免疫恒常性が維持されるのであろうか.このような免疫自己寛容,免疫恒常性の維持機構の理解は,自己免疫疾患,アレルギーなどの免疫病理学的疾患の原因・発症機構の理解とその治療・予防に結びつくだけではない.自己組織から発生したがん細胞に対する効果的な腫瘍免疫応答の惹起,腸内細菌など生体と相利共生する微生物に対する免疫不応答,妊娠母体にとっては非自己である胎児に対する胎児-母体免疫寛容機構の生理と病理の理解,その制御法の開発,さらには移植臓器をあたかも自己組織として安定に受容させる移植免疫寛容の導入法の開発につながる.
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