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19世紀後半,Élie Metchnikoff が,ヒトや下等動物の組織内で異物を捕捉する細胞を貪食細胞(phagocyte)と呼び,さらに形態学的な特徴から,貪食細胞の中でも単核性の細胞をマクロファージ,分葉核を有する細胞をミクロファージと命名した.ミクロファージは,現在では,血中を循環して炎症部位にすみやかに動員されて,異物を貪食し炎症を惹起する好中球として広く知られている細胞である.貪食細胞として発見されたマクロファージは,感染症を引き起こす病原微生物を貪食し,著しく発達したリソソームと融合して貪食した病原微生物を分解・消化することにより生体防御を担う細胞として知られるようになった.さらに,病原微生物の貪食とともに,様々な炎症性メディエーターを産生・分泌し,炎症反応を惹起するとともに,分解・消化された病原微生物由来のペプチド抗原をMHC分子にのせてT細胞に提示することにより免疫応答を誘導することも明らかになった.マクロファージは,炎症・免疫反応において重要な役割を担う貪食細胞であるが,長らくその活性化機構(遺伝子発現誘導機構)は不明のままであった.それが,20世紀後半にTLR(Toll-like receptor)をはじめとした微生物に特有の構造を認識する受容体の機能解析に端を発し,マクロファージが微生物に曝露された際に活性化される分子機構が明らかになった.マクロファージは,骨髄細胞から分化し,血液中を循環する単球が全身の各組織内に動員され,そこでマクロファージに最終分化し,機能を発揮する.このようなマクロファージは,病原微生物を貪食するだけでなく,発生の過程で不必要になって死んでいく細胞を貪食することにより個体発生において重要な役割を担うこと,あるいは,皮膚損傷の際の組織修復においても必要であることなど,炎症・免疫反応以外の様々な場面でも機能することが明らかになっている.そして,様々な疾患の病態とも深く関わっていることが明らかになっている
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