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補完代替医療とは
科学的な方法論や認識を基盤とした現代医学により,標準的と認められている医療に対 して,漢方や鍼灸などの東洋医学や,インドに起源をもつアーユルベーダ,世界各地の伝 統的な薬草療法など,異なる世界観や認識の枠組みに立脚して,標準的とはみなされない 医療の実践が存在する.それらが,現代医学の標準的な医療と同時に行われる場合,補完 (complementary)医療と呼ばれ,標準医療を置き換える形で行われる場合,代替(alternative) 医療と呼ばれる1).
アメリカでは1990年代に補完代替医療(complementary/alternative medicine:CAM) に関する実態調査が行われ2, 3),成人の30%以上が利用しており,年を追うごとに増加し ていることが明らかになった.年間の総支出も270 ~ 344億ドルに及んでおり,現代医 療に支出される額(293億ドル)にほぼ匹敵する規模であった.
アメリカ政府はこうした実情を鑑み,1992年に国立衛生研究所(National Institute of Health:NIH)内に代替医療事務局(Office of Alternative Medicine:OAM)を設け,CAM 研究の推進と国民への情報提供の取り組みを始め,その後1998年に,国立補完代替医療 センター(National Center for Complementary Alternative Medicine:NCCAM)に格 上げされた.
ところが,CAMの科学的研究により,現代医療を上回る有用性が示されて従来治療を 押しのけて代替治療がスタンダードとされるケースはほとんどなく,現代医学的治療と並 行する補完医療としての意義が確認される例が大多数である.そのため現在では,従来の 治療とうまく調和させ,各々の長所を生かす統合医療(integrated medicine)という概念 が新たに提唱され,2014年にはNCCAMは国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrated Health:NCCIH)に改称された.
NCCIHは,補完医療のアプローチを大きく4つに分類している(図1).
1.栄養的アプローチ(食事療法や薬草治療,サプリメントなど)
2.心理的アプローチ(マインドフルネスなど)
3.身体的アプローチ(マッサージなどの手技療法など)
4.総合的アプローチ(ヨガ・太極拳・鍼灸や絵画・音楽・舞踏療法など)
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