特集 関節痛 リウマチ・膠原病診療に強くなる
関節痛の診察・診断
慢性疼痛としての関節・筋疾患
水野 泰行
1
1関西医科大学 心療内科学講座
pp.858-862
発行日 2023年7月1日
Published Date 2023/7/1
DOI https://doi.org/10.15104/th.2023070008
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はじめに
──調子はどうですか.
「全然だめです.痛くて痛くて何もできません」
この雑誌を手に取っている人のなかには,外来で日常的にこんなやりとりを経験されて いる方が少なくないだろう.慢性疼痛の診療が難しい理由の1つに,患者の「取り付く島 がない感」があげられる.要は痛みを理由にあらゆる提案や治療を無効化されてしまうの だ.薬物療法を例にあげても,薬を出しても飲まない,飲むと副作用とは思えないような 有害事象を訴えて中断する,飲み始めの数日は劇的に効いてその後はむしろ悪化するなど, 患者の行動や生理的反応によってやむを得ず続けられない状況が生じてしまい,手詰まり になってしまうのは珍しくない経過だ.そしてほとんどの患者が次にこう言う.
「どうしたらいいですか」
患者のためにあれこれ考えてよかれと思って行った治療が,全然効かなかった,むしろ 悪くなったと言われると,治療者はなかなか心穏やかではいられない.次々と侵襲性の高 い治療を試みたり,自分の守備範囲ではないと手放そうとしたり,無力感に苛まれたり, 時には患者に治る気がないのではないかと疑ったりしてしまうこともある.難治化した慢 性疼痛患者の診療では,治療者自身がこういった自分の心の状態と向き合いながら制御す る忍耐と自制が求められるのである.
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