特集 患者の不安をやわらげるクリニカルスキル
伝えるスキル
外来での話し方の工夫─ 伝わってこそ,医療コミュニケーション─
黒岩 かをる
1
1一般社団法人 日本医療面接訓練評価センター
Japan Medical Interview Training and Assessment Center(JaMITAC ®)
pp.726-732
発行日 2023年6月1日
Published Date 2023/6/1
DOI https://doi.org/10.15104/th.2023060009
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はじめに
時間に追われているあなたは,外来診療の終盤に患者・家族から「わかりました.あり がとうございます」と言われたときに,この言葉をどのように受け止め,対応するだろう か? 診療がうまくいったことを意味する終わりのあいさつに聞こえるが,言葉とは裏腹に 患者・家族は心の内に不安や心配を抱えたままであることも少なくない.もちろん,これ が正解! という唯一の対応はない.あなたと患者・家族は,性格,価値観,人生観,倫理 観,死生観,知的基盤も異なり,心理社会的背景などナラティブも千差万別であるため, 絶対にNGという対応もない.自らの陰性感情も振り返り,非日常の状況にいる患者・家族 の反応や様子を敏感に感じ取って,次の一手をどう打つかが重要である.プロフェッショ ナルとして,時間の制約や相性などをディスコミュニケーションの言い訳にしてはならな い.患者・家族像(ナラティブ)を探って手繰り寄せ,医療者とのやりとりの中で刻々変化 する感情を思い遣って,「この先生になら!」と慕ってもらえる「総合的人間力」,「総合的医 療面接力」を培いたい.
本稿では,まず外来診療におけるすれ違いのある医療コミュニケーション事例を挙げ, ズレやギャップを埋めて良好な関係を築き,患者・家族に,こころから“ありがとう”と感 謝され信頼されることにより充実感・達成感を得て,自らが納得のいく結果を生み出し, 生涯にわたって成長し続けるための,必要不可欠な臨床能力「7つの力」を紹介する.
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