扉
患者への話し方について
角家 暁
1
1金沢医科大学脳神経外科
pp.825-826
発行日 1979年9月10日
Published Date 1979/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436201031
- 有料閲覧
- 文献概要
さき頃,「週刊朝日」に"私の文章修業"という題目で,文筆で名をなしている人人の文章に対するいろいろな考え方,文章作法といったことが連載されていた.この中で特に印象にのこったのは,音楽評論家の吉田秀和氏の話であった.
臨床の悩みを洗い流し,新しい活力を注ぎこんでくれる素晴しい演奏に感動しても,一瞬の間に空間から空間へと過ぎ去ってゆくが,氏の文章により,この感動が更に深く押し広げられ,明確な分析のもとに,絵を見るような解り易い言葉で描写されるのをみると,このような表現力はどのようにして会得されるのかといつも不思議に思い,手の届かぬもののように考えてきた.この疑問に答えるごとく,氏は評論家を志した時,聴いたものを正確に文章にする力を養うために,極めて短時間に経過する相撲の勝負をなるべく詳しく,ポイントをおさえて正確に記述する練習をくり返し,勝負のなかにある感動の手応えを適確に言いあてるよう努力してきたと書いておられる.
Copyright © 1979, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.