特集 ポストコロナの感染症
コロナの陰で減ったが気をつけるべき感染症
MRSA・黄色ブドウ球菌感染症
上原 由紀
1
1藤田医科大学医学部 感染症科
pp.322-327
発行日 2023年3月1日
Published Date 2023/3/1
DOI https://doi.org/10.15104/th.2023030006
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
黄色ブドウ球菌感染症の捉え方
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus :MRSA)は最も有名な薬剤耐性菌の1つである.しかし黄色ブドウ球菌が引き起こす感染症はMRSAか否かにかかわらず共通しているため,まず黄色ブドウ球菌感染症について把握する. ヒトの約30%が体表の常在菌として黄色ブドウ球菌を保菌していることから,黄色ブドウ球菌は皮膚・軟部組織の破綻をスタート地点とし,ここから直達性の皮膚軟部組織感染症や二次的に血流感染症をきたし,感染性心内膜炎,遠隔部位の骨髄炎や深部膿瘍などを引き起こす(表1). さらに黄色ブドウ球菌には体内人工物が存在する部位に好んで感染するという特徴もある.血管内留置カテーテルのほか,心臓人工弁やペースメーカーリード,人工関節などの整形外科領域のデバイスも感染巣として留意すべきである. 黄色ブドウ球菌はさまざまな病原因子を菌体内にもっており,それらの発現により疾患を引き起こす場合もある.代表的なものとしては外毒素であるtoxic shock syndrome toxin-1(TSST-1)産生による毒素性ショック症候群(toxic shock syndrome:TSS)や,表皮剥離性毒素(exfoliative toxin)によるブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(Staphylococcal scalded skin syndrome:SSSS)があげられる.
Copyright© 2023 NANZANDO Co.,Ltd. All Rights Reserved.