特集 困ったときの2の手,3の手 今こそ知りたい漢方・鍼灸
使える! 漢方・鍼灸
妊娠・産褥期編
産婦人科領域で使える漢方─ワンオペ育児には甘草を炙れ!? ─
堀場 裕子
1
1慶應義塾大学医学部 漢方医学センター
pp.88-91
発行日 2023年1月1日
Published Date 2023/1/1
DOI https://doi.org/10.15104/th.2023010015
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はじめに
産後女性の気力低下,動悸を主訴とした症例である.現代社会では,核家族や共働き世帯の増加などにより,育児を家族で乗り切ることが難しくなっている.そのようななか,2016年の社会生活基本調査で,6歳未満の子どもをもつ共働き世帯において家事を全く行わない,育児を全く行わない男性がそれぞれ約80%,約70%という結果があった1).「ワンオペ育児」という言葉が2017年に流行語大賞にノミネートされるなど,とくに母親による一人育児が多いことがわかる.相談・協力者がいないなかでの出産後からの育児,夜の頻回な授乳による睡眠不足や育児への不安など,母親の精神的なストレスはさらに大きくなる.さらには新型コロナ感染症対策であった自粛生活なども大きな要因でストレスが長期化すると,家事や育児に支障が出るようになる.10人に1人が産後うつ病を発症している可能性があるともいわれ2),向精神薬などの治療が必要になることもある.アメリカの産婦人科学会は,産後早期からの継続的な産後ケアが提供されることを推奨している3).また,産後ケアによって産後うつ病を予防できる可能性があることもいくつかの研究で報告されている4, 5).
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