コーヒーブレイク
甘草の縁
屋形 稔
1
1新潟大学
pp.562
発行日 2004年5月15日
Published Date 2004/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100507
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向田邦子のエッセイの一節に昆布石鹸というのが出てくる.彼女が英語が解禁になった食糧不足の頃にこの不思議な菓子に出会った記憶である.黒くて四角で石鹸のようだが食べられる妙に気持のそそられる味で,何という名前で原料は何だろうなんて書いてある.その後反響があって,主にアメリカに在住した経験者からでリコリス(Licorice)キャンデーという漢方で常用される甘草を原料とした菓子であると知ったらしい.
この甘草は私にとっても医者になりたての頃から大きなかかわりがあった.1953年に偶然信州から来院した1人の女性患者(Oさん)がそのきっかけとなった.国内で尿中17-KS測定が私を含めた数か所で始められた頃である.最新の検査と症状からアジソン病と診断されたが,ステロイド薬などみたこともない頃で死に至る病とされていた.いろいろ治療に悩んで文献を漁った末に1950年のランセット誌に胃腸薬として用いられてきた漢方の甘草が長い間に頭痛や浮腫を来たしたという報告がオランダの医師から報告されているのに出合った.
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