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Ⅰ.はじめに
看護実践では患者の身体状態を正確に把握することが重要であり,看護基礎教育においてフィジカルアセスメント技術を身に着けておくことが望まれている.フィジカルアセスメント技術には,問診・視診・触診・聴診・打診が含まれるが,それらには実施者のスキルの個人差に加え,身体内部で生じている現象を可視化できないという課題がある.すなわち,これらのアセスメント技法は,身体内部での目にみえない変化をさまざまな手法を用いて推定する,重要であり,かつ高度な看護技術である.一方,身体内部で生じている器質的変化を可視化し,客観的に把握できる標準化された技術として,超音波検査装置(エコー)によるアセスメント技術が臨床で普及しつつある.エコーを用いたアセスメントは,高齢者看護では特に重要となる無拘束・非侵襲・即時的な第6のフィジカルアセスメント技法といえ,すべての看護師が病態に適した最善のケアを提供できることにつながる.しかし看護の基礎教育過程においても,現任教育においてもエコーに触れる機会はほとんどない.フィジカルアセスメントのDX(デジタルトランスフォーメーション)として,エコーは今後ますます注目される技術であり,老年看護学教育において重要性が増すであろう.現在看護系大学で進んでいる基礎教育のDX化の観点からもこの流れは今後ますます加速していくと思われる.
近年,エコー装置では,プローブがスマートフォンやタブレットにワイヤレスで接続するタイプが普及しており,従来よりも圧倒的な高画質化,軽量化,低価格化が進んでいる.まさに聴診器のように1人1台看護師がエコーを使いこなす時代である.これからさらに普及が進めば,価格もより低価格化するであろう.すでに一昔前では数百万円していたエコー機器が,ほぼ同じ画質で百万円を切る機器へと変貌を遂げており,1999年に褥瘡エコーを初めて報告した時代と比べ,隔世の感がある(紺家,1999).看護師がエコーを使用する場面は頭部から足先まで多岐にわたるが,エコーはフィジカルアセスメントとして従来視診や触診,打診に頼って判断されていた主観的で曖昧な情報に視覚情報を与えるものである.すなわち,エコーはどのような看護師にとっても客観的な判断を支援するための優れたデバイスといえる.一方で看護師にとって,仮に現場にエコー機器があったとしてもエコー導入の障壁となっているのはプローブ操作(走査)と画像読影にスキルが必要である点である.
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