Japanese
English
特集2 事例報告を書いてみよう!
事例報告を活用して老年看護実践の価値と知を共有しよう
Importance of Case Reports to Share the Value and Knowledge of Gerontological Nursing Practice
諏訪 さゆり
1
Sayuri Suwa
1
1千葉大学大学院看護学研究院
1Chiba University Graduate School of Nursing
pp.31-38
発行日 2022年1月31日
Published Date 2022/1/31
- 販売していません
- Abstract 文献概要
- 参考文献 Reference
Ⅰ.事例報告を書くということに気が重くなるのはなぜか
みなさまは,事例報告を書いた経験はあるだろうか.多くの人が,気が重いと感じながら,書かされるという受け身な姿勢で取り組んだ経験があると思う.しかし,何とか書き終えて,提出したときには達成感を味わったのではないだろうか.とはいえ,次にまた事例報告を書こうとは思えないだろう.本稿では,そのような状況から出発したいと思う.
看護実践が多様な場で脈々と続いてきたのは,それぞれの看護実践に価値があるからである.その価値を,みなさまはどのように表現しているだろうか.ナイチンゲール誓詞でもうたわれている誠実さ,清らかさを頭に浮かべる人がいるかもしれない.ナイチンゲール誓詞やヒポクラテスの誓いとは,よい看護師や医師に必要となる性格の特徴を表したもので,徳倫理として位置づけることができる.徳倫理では,人間として善意,公正,忍耐,慎重,理性的,良心,正直,正義,慎重,忠実,などの徳を有している人が有徳な行為者であるとし,義務を越える行為を行うことを推奨している(赤林ら,2004).ただし,徳倫理では他者への影響は考えられていない.そのため,徳倫理では,専門職者の立場で自己中心的な行為を強化してしまうことが起こる.すなわち,患者や家族への影響は考えていないという特徴がある.したがって,患者中心や利用者中心,パーソン・センタードという用語で表現される対象者を尊重する看護実践の価値の強調がされることになる.
Copyright © 2022, Japan Academy of Gerontological Nursing All rights reserved.