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1.背 景
近年,世界的に一般急性期病院における認知症ケアの質に対する関心が高まっている.高齢化が進んだ国では,身体疾患の治療を行う一般病院で入院患者に広く認知症がみられている(Timmons et al., 2015;Fogg et al., 2017).一般急性期病院では転倒・転落,ルート類の自己抜去,他の患者・職員への暴言・暴力に対応するため身体拘束を実施することがある(Krüger et al., 2013).認知機能障害があることは身体拘束を受けるリスクを高める(Hofmann et al., 2014).しかし,身体拘束の実施は患者の精神機能や身体機能を低下させ(Castle, 2006;Enberg et al., 2008),また死亡リスクを上昇させる(Barnett et al., 2012;Rakhmatullina et al., 2013).一方で身体拘束による転倒・転落の予防効果はないとされている(Sze et al., 2012).
各国の認知症施策においても,一般急性期病院の認知症ケアの質向上は重点対策になっている(Nakanishi et al., 2015).日本は,2015年1月に発表した「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」で,認知症の行動・心理症状や身体合併症への対応にあたる医療・介護の連携を目指す「循環型の仕組み」を導入した.一般急性期病院は「循環型の仕組み」では身体合併症対応等に位置づけられ,主な政策として「病院勤務の医療従事者向け認知症対応力向上研修」が展開されている.また2016年の診療報酬改定で「認知症ケア加算」が新設され,身体疾患のために入院した認知症患者のケアの質向上を図るため,病棟での取組みや多職種チームによる介入を評価することとなった.認知症ケア加算の施設基準において身体拘束の実施基準を含めた認知症ケアに関する手順書の作成が求められているほか,対象患者に身体拘束を実施した日は100分の60に減算されるといった要件がある.すなわち,認知症ケア加算のねらいのひとつに,認知症患者に対する身体拘束の最小化がある.しかし,認知症ケア加算導入の効果はこれまで明らかではなかった.
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