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1.はじめに
人口の高齢化に伴って認知症高齢者の数は増大し,2013年6月に厚生労働省では認知症高齢者が462万人になると推計しており,さらに軽度認知症(MCI;Mild Cognitive Impairment)も含めると862万人に達し,これは高齢者の4人に1人が認知症に直面することになる(厚生労働省,2013).介護保険施設での認知症高齢者は,脳神経の障害の影響や歩行・バランス機能の低下から転倒・骨折を起こしやすく,いわゆる認知症の行動・心理症状(BPSD;Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)のために看護・介護に関する負担感の増大が指摘されている.また,急性期病院においては,入院期間の短縮化によるケア治療のスピードや方法が認知症高齢者のケアと対立したり,治療のための行動制限などから生活リズムの障害やBPSDの増悪,入院による混乱・せん妄などから合併症を引き起こしやすいなど,認知症高齢者のケアにおいては課題が山積している.さらに急性期病院では,認知症高齢者のBPSDに対する対応が十分でないために身体合併症に起因するBPSDに対する適切な診断や治療が十分実施されていないという報告(熊谷ら,2010)や抑制や身体拘束などの倫理的課題も多く(諏訪,2012)看護師の負担感を増大させている(松尾,2011).
世界に先駆けて超高齢社会となったわが国においては,従来の急性期疾患を対象とした救命・延命・治癒・社会復帰を目的とした医療から,慢性期疾患の多い高齢者を地域全体で治し支える医療への大変換が求められている.高齢化の進展に伴い「疾病構造が変化」していくなかで,「治す医療から,治し支える医療へ」の転換が求められ,医療者として「生活を支える」ことの必要性が指摘されている(厚生労働省,2016).看護においても従来の疾患別や問題志向型の看護実践の展開では対応しきれない課題が山積しており,看護のパラダイムの転換が求められる.老年看護の実践においては単なる健康の維持,増進だけでなく,生きる希望や最期の瞬間までその人らしく生きることを支援する必要がある.超高齢社会における看護のパラダイムの転換として,筆者の研究を踏まえて最期まで輝く人生を支援するための看護の創造を考えていきたい.
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