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日本老年看護学会が今年で設立20周年を迎えられたこと,一般社団法人日本老年医学会(以下,当学会)を代表してこころからお祝いを申し上げます.20周年を記念した日本老年看護学会機関誌『老年看護学』の特集「未来への提言」という寄稿のご依頼をいただき,老年医学の立場から日本老年看護学会のみなさまに今後の高齢者医療に関するメッセージをお送りいたします.
わが国の医療をめぐる環境・情勢はこの10年で大きく変わった.これには,7:1看護体制やDPC(Diagnosis Procedure Combination;診断群分類),病院機能評価の導入,政策的な診療報酬の改定,社会保障制度改革国民会議の報告書にうたわれている病院のさらなる機能分化等による臨床現場の変化,在宅医療の推進,医師の地域偏在と専門の偏在,看護師や介護スタッフの不足など多くの要因があり,今後さらに病床機能報告制度の導入,急性期病床数の削減などのドラスティックな変化が訪れようとしている.このような医療体制の変化の根底にあるもっとも重要なものは,わが国の高齢化のさらなる進展である.すなわち,「2025年問題」と称されるように,2025年には高齢化率が30%に達し,そのうち前期高齢者が12%,後期高齢者が18%(絶対数では2179万人)と,高齢者のなかでも後期高齢者が激増する未曾有の「超高齢社会」の到来が予測されている.しかしながら,このような超高齢社会におけるわが国の医療のあり方に関する議論は不足しているのが現状である.高齢者の医療においては「全人的医療」とよばれる総合的な視点が不可欠である.すなわち,臓器をみる診療だけでは不十分であり,全身の臓器機能,また日常生活動作(Activities of Daily Living;ADL),認知機能などの身体機能,こころのケア,さらに社会環境の調整にまで及ぶ広い視点が必要となり,これが全人的医療の意味するものである(大内,2015).全人的医療は,高齢者をみる場合にはとくに重要となり,この視点がなければ高齢者医療は成り立たないといっても過言ではない.しかるに,このことが一般の医療スタッフに必ずしもよく理解されていないのが現状である.
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