日本老年看護学会第16回学術集会特集Ⅱ シンポジウム─老人看護CNSの活動の広がりと将来展望
急性期医療の現場から『よりよく逝くこと』を考える
西山 みどり
1
1神戸海星病院
pp.17-20
発行日 2012年3月31日
Published Date 2012/3/31
- 販売していません
- 文献概要
はじめに
社会の高齢化に伴い,わが国は多死社会を迎えている.このような状況下,急性期病院で亡くなる人が約8割を占めている.しかしながら急性期病院の役割は治療が第一優先となっており,たとえば85歳以上の超高齢者に対しても,またいかなる身体状態においても治療が施され,最期のときに何本ものチューブ類が留置された人,全身の浮腫が著明な人,四肢に点滴痕が多くみられる人,関節の拘縮が著しい人などがみられる.急性期病院に入院したことにより,本来,QOLを向上させるためにある医療行為で苦痛を味わい,最期までひとりの人格をもった人間として存在する機会を奪われ,ひいては国の医療費を圧迫する結果を招いている.この背景には,老化と疾患の見極めがむずかしいこと,終末期の予後予測がむずかしいこと,チーム医療の機能が十分でないこと,終末期ケアや緩和ケアの対象は悪性疾患を有する人であるという認識が強いこと,最期のときについて語る文化が根づいていないことなどが考えられる.
今回,急性期病院のなかで『よりよく逝くこと』,すなわち看取りケアの充実を図っていくために,多職種と協働しながら組織変革に努めてきた経緯において,老人看護専門看護師(以下,老人看護CNS)としてチームのなかでになってきた役割について紹介し,最後に将来展望について述べたい.
Copyright © 2012, Japan Academy of Gerontological Nursing All rights reserved.