手のひらで知る世界 目は見えず耳は聴こえずとも・9
施設で逝ったレジスタント
石井 康子
pp.968-970
発行日 1979年9月1日
Published Date 1979/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918772
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ハッチャンとの出会い
歩くことも,ごはんを食べることも,本のページをめくることも自分でできぬほど体の機能を奪われた‘ハッチャン’は,住まいともする施設の職員3人に連られて初めて国立の私の家に来たのは,もう2年半以上も前のことでしょうか.そしてハッチャンが突然の死をとげてから,ちょうど1年が過ぎました.車椅子でしか座れない体を畳の上に横たえて,私の問いに答えてくれました.
12歳のころの風邪の治療ミスから始まって,医療を受ければ受けるほど体の機能を奪われ,今また耳もだんだん遠くなる,と言うのでした.その時,お腹が痛いからハリをしてとしきりに言っていました.週2回の浣腸でやっと排便し,お腹をうんと押さえてもらって,なんとかガスを出さねばならぬハッチャンの体にハリをうつのは私にはできなくて,それでもしきりに言われて,やっとためらいながらハリをうちました.
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