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10数年以上も前になるが,在外研究で渡米の折,シアトルの病院でNurse Practitioner(以下,NP)について研修をしたことがあった.脊髄損傷やてんかんの外来,整形外科外来でそれぞれのNPについた.その折,整形外科外来では同じように(隣室で)診察しているPhysician Assistant(以下,PA)を知った.患者の問診や診察をして,レントゲン写真の指示を出し,撮ったX線写真は奥にいる医師と相談のうえ診断し,薬の処方をする.外からみる限り,ここでのNPとPAはほぼ同じ仕事をしていた.筆者はPAの職種をこのとき初めて知ったため,このことについてNPにたずねると「私たちは看護がベースだが,彼らは医師のアシスタントだから」と簡単にいわれた.
本学会の看護政策検討委員になって2年目になるが,この間,委員会の課題は特定看護師(仮称,以下略)と看護系学会等社会保険連合(以下,看保連)に関することがその大半を占めていた.とくに特定看護師に関しては,これまで本委員会は日本看護系学会協議会と協議しながら,学術集会の交流集会や看護政策拡大委員会を設けて検討してきた.特定看護師は,看護師の役割拡大の実現を目指した新しい職種の誕生となるのか,専門看護師との違いはどこにあるかなど,さまざまな期待感をもって老年看護分野における役割を討議してきた.厚生労働省は2010年3月「チーム医療の推進に関する検討委員会報告書」において,特定看護師の創設を提案,特定看護師養成調査試行事業を実施し,2011年度には業務試行事業が実施されている.2011年8月に,日本看護系学会協議会の緊急集会があり,厚生労働省の【特定看護師の考え方(試案)】が示された.それによると,特定看護師の認証要件は,①看護師の免許を有すること,②実務経験5年以上であること,③厚生労働大臣の指定を受けたカリキュラムを修了すること,④厚生労働大臣の実施する試験に合格することであり,カリキュラムには2年間の課程と8か月程度の課程の2種類を設置,8か月程度の課程はより限定的な分野に関連したコースを指すという.業務独占・名称独占とはしない.特定の医行為における医師の指示方法は,特定看護師は「包括指示」であり,そのほかの看護師は「具体的指示」となるため異なる.認証機関による能力認証を行い,「見える化」を図るという.委員会ではこれまで特定看護師は大学院教育を受けた専門看護師の発展型になるのか,共通と違いなどについて検討してきたため,今回の案は特定の医行為に特化している面で戸惑っている.また,特定の医行為がクローズアップされたことで,PAの職種との共通点や違いが話題になり,改めて看護モデルと医学モデルの違い,すなわち患者の療養生活を視野に入れてQOLを高める看護の視点から医行為をとらえることについて,意識せざるを得なくなった.
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