Japanese
English
巻頭言
介護施設における老年看護の未来に向かって
Toward the Future of Gerontological Nursing in Long-Term Care Faculties
水野 敏子
Toshiko Mizuno
pp.4
発行日 2010年1月15日
Published Date 2010/1/15
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- Abstract 文献概要
老人保健施設の認知症病棟で出合ったある看護師を時々思い出す.入浴を拒否する利用者の誘導を,介護職に代わり対応することで利用者が笑顔を取り戻し,しっかりした足取りで,いつの間にか浴室に着いていたこと.家族が利用者のことを心配して看護師に声をかけてきた場面では,利用者ご本人と3人で話しながら方針や具体的方法,家族が気をつけることなどについてご家族が納得できるように話をし,ご家族も安心した表情となったことなどである.その間利用者は落ち着いて会話に参加していた.この看護師は病棟の中央にいて病棟全体の動きを判断し,ケアの隙間を埋めているようであった.他の施設においても看護師は黒子になって介護職が不安なく働けるように徹しているとの話も聴いている.
このように看護師は一度に多くのことをアセスメントしながらそれを統合し看護を実践している.この何気ない行動に実に多くの技術が隠されている.この豊かな援助技術の説明が難しいため,看護の中でも施設看護が注目され難いという状況があったと思われる.日本老年看護学会誌では高齢者介護施設における研究が発刊以来,毎年1〜6論文掲載されてはいるが,対象の理解に関したものが多く,施設におけるケアに限ってみるとほんのわずかであり,研究の蓄積が十分とはいい難い.
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