日本老年看護学会第12回学術集会特集 シンポジウム
老年看護実践におけるライフストーリー・アプローチの可能性
原 祥子
1
1島根大学医学部看護学科
pp.23-27
発行日 2008年3月15日
Published Date 2008/3/15
- 販売していません
- 文献概要
- 参考文献
はじめに
人間とは,生涯にわたって発達し続ける存在である。この生涯発達の観点からErikson(1963,1982)は,老年期を自己の人生を振り返り,自我を統合する時期として特徴づけた。また,老年期において統合されたアイデンティティをつくりあげ,残された人生に意味づけをするという作業を行うためには,自分の歩んできた道筋について語ること,つまりライフストーリーが有用である(Kaufman, 1986)といわれるようになった。さらに,自分自身の今までの生き方が問われ,新しい自己への建て直しが求められるときにライフストーリーが必要である(やまだ,1999)ともいわれている。
老年期には,加齢や病いによる心身の機能低下に加え,入院や施設を利用するという出来事によって特有のストレスが加わりやすい状況も起こってくる。したがって,われわれの看護の対象である高齢者にこそ人生を振り返り自己を表現することが必要であり,それを支援するための看護ケアが要求されることもあるだろう。自己の建て直しを問われている高齢者が,人生を振り返って他者に語ることを通していかに自己の存在に意味づけをしていくのかは,看護者としてわれわれもその人のライフストーリーの共同制作者であるという認識をもつかどうか,看護者次第だと筆者は考えている。
ここでは,筆者自身の実践と研究を振り返りながら,「ライフストーリーを聴く」というアプローチの看護ケアとしての価値を確認したうえで,老年看護実践におけるライフストーリー・アプローチの可能性について私見を述べる。
Copyright © 2008, Japan Academy of Gerontological Nursing All rights reserved.