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『不妊を語る―19人のライフストーリー』
實﨑 美奈
1
1聖路加看護大学
pp.620
発行日 2012年7月25日
Published Date 2012/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665102238
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本誌の読者の皆さまは,“不妊”にどのようなイメージをお持ちでしょう。「妊婦健診で笑顔を見かけたことがない」「細かい質問が多い」など,不妊治療後の妊産褥婦さんへのケア場面で困難感を覚えた経験はありませんか? 「何かほかの妊婦さんとは違う,と思ったら,不妊治療後の妊婦さんだった」という助産師さんの声をよく耳にします。どちらかといえば苦手意識を持っておられる方が多いのではないでしょうか。
“100人いれば100通りのお産がある”と言われているのと同様に,“不妊”の問題を抱えるカップルにもそれぞれのストーリーがあります。11章で紹介されている渋谷さん(仮名・女性)の主な不妊原因は乏精子症。仕事と両立させながらの4年間の通院期間で10回以上の人工授精を受けた末に第1子を授かり,第2子は自然妊娠で授かっています。しかし,その2回の妊娠経過は順調とは言えず,第1子の切迫流産での入院中には仕事を辞め,妊娠後期には2回とも切迫早産で安静入院。入院中は自分が人間で感情があるものだと思うととても耐えられないから,「人間保育器だ」と自分に言い聞かせて過ごしました。2回とも帝王切開で出産したこともあり,渋谷さんは2人の子どもを授かっていながらも自分を「生殖能力に欠けた女」だと思っています。不妊専門クリニックからの転院であった第1子の妊娠期間中には,不妊治療後妊婦という認識のもとにケアが提供されたことでしょう。しかし,自然妊娠した第2子の妊娠中に“不妊”の問題を抱えていることが重視されにくかった可能性は否めません。治療経験の有無にかかわらず,“不妊”の問題を抱えているカップルは決して少なくないのです。
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