日本老年看護学会第7回学術集会特集 シンポジウムA
情報社会における老年看護の可能性
情報社会における老年看護の可能性—研究者の立場から
水谷 信子
1
1兵庫県立看護大学
pp.19-24
発行日 2003年3月15日
Published Date 2003/3/15
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はじめに
超高齢社会・長寿社会の到来に向けて,医療環境は病院型医療から在宅型医療へと変化している.このような状況の中で,医療は患者を病院にむかえて治療・看護する体制から,患者の生活の場に出向いて医療・看護する体制づくりの必要性に迫られている.1990年代前半から研究がすすめられている遠隔医療は,情報通信技術を利用して,在宅型医療をすすめていくための大きな期待がかけられている.この動向は,1990年代後半に始まったIT革命によって,遠隔地での診断や治療の実施によってさらに急速に進展している(川口,2001).
このような背景を踏まえて,兵庫県立看護大学では,平成13年度より「情報通信技術(IT)を活用した地域ケアシステムの開発—「まちの保健室」を拠点としたネットワーク化への取り組み—」という研究プロジェクトを全学的に開始している.このプロジェクトは,平成13年4月,本学に附設された「附置研推進センター」に地域住民が個々の健康上の問題や医療上の悩みなどを気軽に相談できるような場として「まちの保健室」を位置づけた.そしてこの「まちの保健室」では,実施されるケア提供はもちろんのこと,在宅に向けて,情報通信技術を生かした遠隔看護のシステム機能を付与し,さらには大学や研究機関との専門的情報交流を遠隔通信・教育を通して行われるようなケアづくりを目指している.
ここでは,兵庫県立看護大学の遠隔看護プロジェクトおよび老人看護領域での研究的取り組みの一部の概要と,北海道で展開されているテレビ電話による高齢者在宅相談サービスの取り組みの現状について紹介し,情報社会における老年看護研究の可能性を考えてみたい.
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