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Ⅰ.はじめに
急激な高齢社会到来による保健医療福祉制度の変化や、在宅療養者へのQOLの観点からも、在宅ケアの普及が進んでいる。3年課程看護師養成所では平成9年度より「在宅看護論」が新たにカリキュラムに組み入れられ、社会のニーズに応える看護師の育成が始まった。在宅看護論とは地域看護学の一環であり、「地域で生活しながら療養する人々とその家族を理解し在宅での看護の基礎を学ぶ。」1)ものである。つまり在宅で療養生活する個人とその家族の多種多様な健康問題や生活問題に対して、生活条件やQOLの向上、維持をはかる看護について、「生活モデル」2)での援助を展開する必要がある。そのため在宅看護では、対象を「生活者」として捉えていくことが必須であり、その前提には、多種多様な生活事象の理解が重要となる。その課題を受けて各養成所では在宅看護論を臨地で学ばせる様々な教育方法を模索し実践している3)〜5)。しかし看護学生(以下、学生とする)にとって、「生活」とは、自分と自分の家族の当たり前の生活のことであり、看護の対象者の生活の個別性を捉え、生活者として理解していくことには困難を来たしている。先行研究からも学生の生活経験の貧しさから生活イメージが持てないことや生活の視点についての大枠は理解しても、体感的・具象的には理解不足であることが指摘されている6)〜10)。
今回、在宅看護論実習の中に療養者の家庭に学生が単独で訪問し、日中の生活を療養者や家族と共に過ごす実習を組み入れた(以下、滞在実習とする)。これは、学生が同行訪問のようなサービス提供者側からではなく、療養者の居宅に身を置くことでサービスを受ける利用者側の目線を体験する実習である。この滞在実習で学生が療養者とその家族の生活の理解について、学習成果が得られているのかを、実習記録を分析した結果から報告する。
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