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Ⅰ.はじめに
体験学習は看護基礎教育で多く活用されている教育方法である。学生が自らの心身を用いて患者役を行う擬似患者体験という学習方法は学習の動機づけ、学生が「感じ」たり「考え」たりする直接的経験の機会のひとつとして位置づけられており1)、経験は対象の理解と看護方法の理解、看護師としての情意領域の育成に関与する2)。老年看護学における高齢者体験3)やオムツ内での排泄体験4)、成人看護学における片麻痺患者体験5)、母性看護学における妊婦体験6)などの擬似患者体験が直接的経験として報告されているが、その経験が不可能なときにはペーパーシミュレーション7)などを用いたりして教材とする代替方法も用いられている。教師が学生に経験させたい事象は学生が日常で経験していないものである。わが国では阪神・淡路大震災を契機に災害医療・災害看護についての見直しが求められ、看護基礎教育にも災害時に共通する救急看護の知識・技術の基本を習得させる教育の必要性が指摘された8)。災害看護学あるいは災害現場における救急初療業務とBLS(basic life support)などPrehospitalCareを包含した救急看護学9)の確立が急がれているが、各教育機関における科目立てや教育内容にはばらつきがある10)。一方、医療機関や医療体制の整備は着々と進められ11)、大規模災害に備えて災害拠点病院と消防や医師会を中心に、災害時の負傷者の救出、トリアージ、負傷者の搬送及び受け入れシステムの確立に向けて多数の模擬患者を設定した訓練が実施されている12)13)。災害訓練を災害看護に関する授業展開に活用している報告14)-18)と、授業の一環ではないが訓練参加を災害看護の学習に結びつける報告19)20)はあったが、負傷者役としての学生の体験や学びを質的に分析した研究や、災害看護学のない教育機関における学生の災害訓練参加の教育的効果についての報告は見あたらなかった。擬似患者体験の教育的意義とリアルに負傷者体験ができる機会としての災害訓練をとらえると、災害看護学の学習以外にも看護基礎教育における活用の可能性があるのではないかと考えた。当校では災害看護学の科目立てはしておらず、成人看護学の「生命の危機状態にある患者の看護」の一環として救急看護を取り入れている。今回、当校の実習病院が災害拠点病院として集団災害事故訓練を実施することになり、女性の負傷者役として学生に参加依頼があったのを機に、負傷者役として参加した学生の体験を明らかにして、災害訓練の看護基礎教育での活用を検討したいと考えた。
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