第5回日本看護医療学会学術集会 シンポジウム
「看護」を解き明かすために—あなたはなぜその方法を用いるのですか?
がん看護におけるエスノグラフィー—エスノグラフィーを活用した研究ががん看護に与えるものは何か
水野 道代
1
1石川県立看護大学
pp.27
発行日 2003年12月25日
Published Date 2003/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.7009200215
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ある特別な状況におかれた人々によって創り出された特有なものの見方、考え方や生活の仕方というものがある。その特別な状況が日本という風土の中で生まれ育つことや、米国という多民族の中で育ち暮らすことであるならば、そこから長年かけて創り出されたものが文化と呼ばれることに抵抗を感じる人はさほどいないであろう。ただ本シンポジュームで話題にした特定の状況とは、がんという病気を体験しながら社会生活をおくることや、造血器のがんに罹った患者が長期間の療養生活をおくることを指していた。演者は、このような状況から創り出される患者独特のもの見方や考え方、生活の仕方を文化とよび、その文化を記述する方法論であるエスノグラフイーを用いて、患者達の体験を理解する方法を述べようと考えた。
エスノグラフイーは文化人類学の一種で、文化、つまり「人々が経験や普段の社会行動を解釈するために用いる既存の知識」を記述する方法である(Spradley;1980)。がんという体験は人々の生き方や考え方、生活の仕方を変えてしまうほど大きな体験である。その体験を理解するためにエスノグラフイーを用いる理由は、がんを体験するということは、その事によって、がんになった者たちに特有の文化が生まれるほどの事柄だと考えるからである。
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